社会適合者(仮)【ケータイ小説】【おすすめ紹介処】~第一話目~

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僕は都心で独り暮らしをしている若者。

でも、一般的な生活とは、少しかけ離れているかもしれない。

そう。ネットカフェ。

帰る場所がネットカフェだから。

物心がついた時に、気付いたんだけど、両親は1人しかいなかった。

親は懸命に僕を育ててくれた。高校までしっかり行かせてくれたから。

それで、高校を卒業をして、公務員になった。

僕は望んでいた進路だったから、合格した時は心底嬉しかった。

親元はその時に離れた。自分の住む自治体より、良い待遇の場所で勤めをしたかったから。

理由はそれ以外に特になかった。

親は、

「がんばって」

その一言だけを話していた気がする。

「がんばる」

僕はそう返事をしたのを覚えている。

そこから、都心のアパートで独り暮らしが始まって、3年は順風満帆だった。

正直、コミニュケーションは苦手だったけど、仕事は同期と同じくらいには、こなせていたと思う。

3年目の勤務が終了した時、僕は異動を命じられた。

異動した課の仕事は、前の所属の課より、難しくなかった。

「決裁を下さい」

そう上司に話したら、なぜか、必要のない指導が入り、前より決裁が貰えなくなった。

人間の心というものは、儚くも脆いものだと思う。

個人差はあると思うよ。

僕は仕事に一生懸命だったし、20そこそこの経験で、そこまで大人な考えができるかって、言ったら。

1)

「抑うつ状態かな」

病院をいくつか回った末、医者から伝えられた言葉は短いものだった。

確か、診断書にも、そう書かれたような記憶がある。

あまり酷くないらしいから、とにかく休養を取れば良いということだった。

約3ヶ月ほどの休職を経て、僕は職場へと戻ることになった。

ここで、人を変えるということは、とても難しいことだと人生で初めて感じた。

戻った職場はまるで変わっていなかった。僕はもう戻れないと感じてしまった。

でも、戻るしかなかった。

「仕事を辞めてきた」

そう言って、親が細々と暮らしている実家の賃貸アパートに、戻る勇気が僕にはなかった。

体力の切れたまま、走り続けるように、僕は職場へと戻った。

11:57分

「書類まだ」

何気ない上司の一言に、僕はプツリと心の糸が切れてしまった気がした。

昼休み、お昼を買いに庁舎の外に出た時、僕の足は自宅アパートへと向かっていた。

そのまま半日ほど、泣いていただろうか。

夜中になっていた。

明日も仕事だ。

しかし、僕はもうアパートから出ることが出来なかった。

幾分か気持ちを奮い立たせようと、プラスのイメージを勝手に想い描いたが、何の効果もなかった。

何らかの方法で、辞意を伝えた時、僕は21歳の無職になっていた。

頼れる人はいなかった。

病院に行くのも、億劫になってしまい、僕は酷い無気力の状態で、アパートとスーパーの惣菜コーナーを往復する生活が続いていた。

何ヶ月か経っただろうか。

電気が止まっていた。

水道はまだ止まっていなかった。

仕事。

とりあえず、今より負担の少ない仕事を探したかった。

たけど、すぐに行動に移す気にはなれない。

手持ちのメイン口座にはもうお金が無かった。

別に開設していた貯金用の口座に12万くらい。

社会人1年目の時、月1万円ずつ貯めていたお金だった。

2年目からは面倒になり、メイン口座に全てお金を入れていた。

そんな状況だった。

あまり、明日の事は考えられなかったけど、なんとなく、インターネットが使える場所に行きたかった。

それで、僕はネットカフェに辿り着いた。

ネットカフェはナイトパックというものを利用すると、だいたい1500円前後で夜を凌げる。

月々、45000円ってとこだろうか。

行き着いた初日の夜は、とにかくネットサーフィンをした。

−−住所がない−−

派遣とか日雇いの仕事を登録するにも、僕が見つけられた限りでは、住所が必要だった。

頼れる人がいなかった。

親。

唯一ひとりの親が孤独な若者の頼れる先だった。

気付いたら、スマホを手にとって、電話のアプリを開いていた。

この日は、アプリを開いて閉じてを繰り返すだけだった。

あれこれ思い悩んでいるうちに、ナイトパックの時間が終わりをつげる。

そして、あてもなく、ネットカフェを出た。

本調子ではない心の状態で、都心の街をただただ歩く。

いつもは断っていた広告付きのポケットティッシュも今日ばかりは有難くいただいた。

朝ご飯も食べていなかったので、大手チェーンの飲食店前を通ると、いつも以上に良い香りが感じられた。

追い詰められていくと、五感がいつもより少し、研ぎ澄まされているような気がした。

結局、ファストフードの店に入った。

涙が出そうなほど、そこでの食事は美味であった。

支払った金額は数百円。

人は与えられた環境で、感性が変化するということを学ぶ。

理由はよく分からないが、日差しに照らされるのが、やけに辛かった。

近くの大きな公園に、日陰を求めて、僕は立ち寄った。

広葉樹の大きな大木、その下のベンチが日陰になっていた。

座って今後のイメージを膨らませようとする。

しかし、それは有名人になる事を願うかのように、難易度の高いものであった。

4時間。

いや、5時間だろうか。

ただ、ベンチに座っていると、1人の男性が話しかけてきた。

「兄ちゃん。ずっと座っとるけど」

年齢は恐らく、50代か60代くらいの方だろう。

さすがに半日も座っていれば、不審に思われるのも不思議ではない。

僕からすれば、長く伸びた髭に、あまり洗われていないだろう衣服の彼が不審に見えた。

「あぁ、すみません、避けます」

てっきりここが彼のテリトリーだと思い、咄嗟に謝罪の言葉が出てきた。

「家出でもしたんか」

そう返される。

「アパート追い出されちゃって」

何かヒントがもらえる気がした。

だから、正直に伝えてみた。

「なー、若いんだから。いくらでも働ける」

ありきたりな返答をされ諦めて、その場を去ろうとすると、

「わしはもう日雇いにありつけなくなってきた」

「今日も飯配ってくれる人待っとる」

そう彼が話した瞬間、思わず少し大きな声で、

「どこで!」

と声を上げてしまった。

「兄ちゃん、元気あるやないか、18:00にもっぺん来てみ」

彼は颯爽とスーパーの方に向かって行った。

足を引きずりながら。

小さい目標が出来るというものは、心を少し鼓舞してくれるものである。

例えば、枯渇した砂漠で、水を求めて彷徨っている時、オアシスが見えているのと、見えていないのでは、雲泥の差があると思う。

そこに、距離が10キロ。20キロあろうとも。

そうなると、頭は少し冴えた状態になる。

ふと少し、先を見据えた考えが浮かんできた。

−−炊き出しをしてくれる支援団体の人に相談してみよう−−

真剣に3年と少し、公務に身を捧げていた知恵が活きそうだった。

そうなると、他にも良案が浮かんでくる。

大きめリュックサックに、カップラーメンを2つほどストックしていた。

「食べ終わったら、容器は1つ取っておこう」

そのまま、カップラーメンを食べて捨ててしまえば、100円ほどを消費する。

だが、スーパーで即席麺1袋を100円で購入して、その袋に即席麺が2つ若しくは3つ入っていれば、1食あたりはさらに安くなることに気付く。

運良く、何気に立ち寄ったスーパーで、少し小さいが、1袋に4つの即席麺が入っている商品を購入できた。

値段は税込99円。

あれこれ生活していくための対策をしていると日が暮れてきた。

当然のごとく、広葉樹の大きな大木がある公園に戻ることにする。

そこで、僕は衝撃の光景を目にする。

※この作品はフィクションです

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